三毛別(三渓)ヒグマ事件…羆風・その5へ戻る

人力で馬橇を曳く事約1時間半、三毛別青年会館に到着した巨大羆は集まる群衆へ晒しものにされた後、館内に運び込まれ解剖されました。
最大の関心事である胃の内容物を検分すると、6日前犠牲となった太田マユ(34歳)が当日着用していた葡萄色脚絆の片方や、原型を留める頭髪が出てきて立ち会った人達(と言っても専門家ではなく、興味津々の一般人が集まっていたそうです)を驚かせました。

集まった人達の中に、偶然雨竜から来ていたアイヌ人夫婦がいました。夫妻は解剖が始まる前から
「この羆は数日前に雨竜で婦女を食い殺した奴に違いない」
「赤い肌着の切れ端が出てくるだろう」
と言っていたのですが、果たしてその話の通りの布切れが出てきました。

雨竜町恵岱岳えたいだけより現場まで直線で約50km

また、別の地方から来たマタギの一人が
「この巨大羆は旭川方面で婦女を食い殺した奴で、肉色の脚絆が出てくるだろう」
と言っていたのですが、これも話の通りの脚絆が出てきました。

この巨大羆を射止めた本人、山本兵吉氏も
「この羆は天塩国で飯場の炊婦を川辺で襲って食い殺し、数日前から三人組のアイヌ人に追われて苫前まで逃げた羆だ。 だから太田マユのとは別の葡萄色の脚絆が出てくるはずだ」
と言いましたが、これまたその話の通りの脚絆が出てきたので、集まった人々は各地からの証言が全て的中したのに大変驚きました。

…と書いている自分も、見出しページに書いた通り羆の嗜好・拘りに驚いています。
ここに出てくる証言の全てが女性ばかり狙っているのにお気づきになりましたか？

これらの品々はアルコール漬けにして、保存されることにされました…と言われていますが、そのような物はどこにもありませんし、保存するという話自体も果たして本当なのか怪しいようです。