三毛別(三渓)ヒグマ事件…熊狩本部設営と大討伐隊編成・その3
事件現場地図(再掲)
陸軍迄導入しての真剣勝負を嘲笑うかのように、朝からの静けさを破り12月13日17時過ぎ巨大羆が明景宅の川上側隣家の中川孫一宅に現れました。
二斗樽の鰊漬・鶏舎の鶏数羽・雑穀類を貪り喰い、室内を破壊し尽くすと糞尿をぶちまかして姿を消しました。
と思いきや、今度は明景宅川下側隣家の数馬アサノ宅に現れ、中川宅同様に暴れると更に下流方向へ松田林治宅・松村長助宅・中川長一宅・吉川輝吉宅・辻橋蔵宅・松浦東三郎宅を続々と襲撃していきました。
特に顕著だったのは、どの家も寝具・衣類・家具が徹底的に破壊され、また8軒中6軒までが寝間を破壊して侵入していました。
しかも婦人用枕の大半がボロボロに破られていました。
特に数馬宅では妻アサノさんが専用に用いていた石湯たんぽ(北海道で湯たんぽの代わりに適当な大きさの石を焼いて布で包んだものを用いる家が多かった)を屋外まで引き出し、包んでいた布はズタズタに裂き、3kgほどもある石を噛み砕きました。
その音は50m余り離れた道からもはっきりと聞こえたそうです。
見出しのページにも書きましたが、特に羆は最初に喰った物に対して凄まじい執念を持つため、本事件でも再三婦女を襲っては喰い、更にはその所持品まで襲う事態に発展したのです。
マタギ衆も体制の強化をしていました。
「天塩国にこの人あり」と知られていた鬼鹿村の老マタギ、”宗谷のアンチャン”こと山本兵吉(58歳)が11日に現地入りしたのです。
山本兵吉氏(撮影時54歳)左腕で仔熊を抱いているの分かりますか？
鬼鹿村(現：留萌郡小平村)オンネ沢(推定)