ソビエトタイタニック「汽船インディギルカ」…ソ連側の記録・その5
船倉浸水の報告を受けた船長の命令により、船員は手用測鉛を船倉に降ろし水位を確認しました。
最初の衝撃から10分と掛からずに船倉の水位は1.5メートルに上昇していました。
機関士はボイラーのバルブを開き(破壊したという文献もあり)爆発を防ぐため蒸気を放出しました。
最初の衝撃・破損から約2時間40分、南西方向へ1海里(1852m)ほど漂流し今度は右舷が岩礁にぶつかります。
急速に右舷側へ傾斜が増し、海図や資料等をブリッジへ取りに行こうとした乗組員は傾斜が酷いために操舵室へたどり着けませんでした。
傾斜が増す中、船内は大混乱となります。乗組員や生存者の証言もかなり食い違いがあります。
パニックになった乗客は客室代わりだった船倉から甲板に急いで行きました。
しかし傾斜が70度近くなると凍った甲板から次々と極寒の海に滑り落ちて凍死しました。
子供連れの女性達は屋根付きのデッキに避難しました。
乗客の一人は「船長は警備員の一人に元囚人を至急船倉から脱出させるよう命令しました。
しかし警備員は船倉から出ようとする人々にライフルを発砲した。数分後、この警備員は自殺した」と証言しています。
船長側の証言として、この乗客の証言と同様の内容を記述している文献がある中、一つの文献では「囚人が警備員達を斬り、数人が殺された。
НКВД(ソ連内務人民委員部)(後のКГБ…ソ連国家保安委員会…KGB)の射手が反抗的行動をとる囚人に発砲し、約20名を射殺した」とされています。
ソ連内務人民委員部徽章
右舷側の衝突から約10分後、船体は右舷側に完全に横倒しとなり、午前4時頃に北緯45度21分東経142度11分(注：測地系不明)で”トド岩”に座礁して漂流が止まりました。
操舵手・航海士・通信士は海中転落しました。
船倉の乗客の多くはコーミング(ハッチ開口部の補強材)までたどりつけず脱出できなくて死亡するか、脱出できても波にさらわれました。
4番船倉では乗客救出命令時に、元囚人がハッチを塞いで逃げる乗客から略奪行為を行いました。
コーミング